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MOULTON – APB – LAND ROVER オーバーホール

ばっちり写真を撮り忘れて分解し始めちゃってますが・・・・
モールトンのAPBのオーバーホールのご依頼を頂きました。
ランドローバーとのコラボモデルでリアの変速が内装3段+外装7段という最近ではまず見なくなった仕様のタイプです。かれこれ20数年前、2000年ごろに生産されたモデルです。

この車体、もうびっくりなぐらい良い状態で保管されておりまして走行距離も少なめ。
この世代の車両で一番心配なサビもかなり少なめでした。

とはいえタイヤやブレーキなどゴム系のパーツは劣化して使い物にならないので新品に交換。
ハブやBB、ヘッドなどもグリースが乾燥して固まっているので完全オーバーホール。
同じく劣化しているワイヤー類も全交換。
もちろん前後サスペンションも消耗部品は全て交換して再調整します。
まぁ要するに完全オーバーホールです。

今回の作業はまず一番気がかりだったリアハブのオーバーホールから。
1番の心配だったのはお持ち込みいただいた時点でヤバかった内装ギヤを動作させるチェーン。
もう首の皮1枚ぐらいの状態まで消耗していまして、不安だったのでチェーンをグネグネ動かしてみたら。。。ポロっと切れました。
このハブはSACHS(ザックス)というブランドのもので、のちにSRAMに統合される自転車パーツメーカーなんですが、当然もう存在しない訳で、この切れちゃったチェーンが入手できるかどうかが心配でしたが、ありました。輸入代理店さんにありました。サスガ。
ただしこれが最後の1本で、今後は海外通販で個人輸入するしか入手する方法はなさそうです。
そんな訳で、もうたぶん私の自転車屋人生において2度とオーバーホールすることがない(かもしれない)ハブとなりました。

チェーンが手に入ったので気を取り直してハブは完全分解して全ての固着したグリスを洗浄し、きれいに組み直します。が最後の最後、中心の軸部分のネジが1個だけどうしても外れませんでした。
回転部分ではないので無理せず洗浄だけにとどめましたが、流石に20年近く放置されていたのでグリスがカチカチに固まっていましたのでここ1点のみ諦めました。
だいたいこういう長年放置されていた内装ハブはゼリー状に固まったグリスがへばり付いているものなのですが、この車両は流石に放置されていた時間が長すぎたようでもうプラスチックみたいにカチカチに固まったグリスで埋め尽くされていました。
ただしSACHSやSRAMの内装ハブに多い砂塵の侵入による不具合が全く見られなかったのは保管状況の良さを物語っていましたね。
同じく内装ハブで有名なスターメーアーチャーやシマノのハブに比べるとびっくりするぐらい気密性が悪いんです。
このハブの場合、金属製の円板を外すとすぐにベアリングが丸見えに。
他のモデルだと外からベアリングが見えるものもあります。それでもちゃんと動作するんだから逆にスゴイです。

分解中は手がベトベトなので途中経過の写真はありませんが、3段階のギヤが中に仕込まれていてちゃんと数えていませんがだいたい30個ぐらいのパーツが入っています。
間違っても興味本位で分解しないでくださいね。99%きちんと元に戻りません。
バラバラの状態でお持ち込みされても正確に戻せないものなので修理もお断りすることになります。ご注意を。

今回はこのハブの精度やこれから先の使用頻度などを考慮してやや硬めのグリスをチョイス。
前途の通り機密性の悪いハブなのでグリスに頼ります。

続きまして、フロントサス。
モールトンらしさを決定づける部分なのでここの整備は大切ですよね。
モールトンの場合、フォークコラムの中にながーいバネが入ってまして、常にバネが圧縮されて突っ張っている状態です。
この車体の場合20年以上圧縮されっぱなしだった訳で、だいたいの場合ちょっと縮んでいます。
なので交換です。
・・・おっと、「交換です」なんてさらっと言ってますけどもう20年以上前の車体です。
通常だったらまず交換部品の入手は絶望的なんですけど、モールトンは交換部品あります。20年経っても交換部品あります!
これってとてつもなく凄いことだと思いませんか?
モールトンって古くなっても価値が落ちない、みたいなことをよく言われるんですが、こういう補修部品の入手も含めて価値が落ちないんだなって思います。
ちなみにバネを支えているピストン部分はこの車体の購入当初のものより良くなった改良バージョンが提供されています。ホンマ凄い。

フロントサスのオーバーホールはまずはとりあえず完全分解。
その後綺麗に磨いて樹脂パーツやブッシュを新品に交換します。
状態の悪い車体だと錆に泣かされる部分ですが今回はアルコールで洗浄するだけでOK。奇跡の保管状態です。

続いてリアサス。
走行距離ではなく当時の精度の問題なのかもしれませんが、少々ガタが出ていたのでピポッド部分を新しいパーツに交換。

こちらもちゃんと新品が用意されていて、ちゃんと改善済みパーツになっています。
制作当時のものよりもしっかりと締め付けできて精度が出し易いボルトの締め方になっています。

リアハブと前後サスペンションのオーバーホールが済んだのであとは現代の自転車と大して変わらず、各部の分解・洗浄・グリスアップを順に行なっています。注意した点としては荒っぽく洗うとヘッドパーツなどのメーカーロゴが消えてしまうことぐらいですね(笑)
字数が多くなりましたので本日はここまで。

ご自宅で眠っているモールトン、ございましたら是非直しましょう。
よっぽどひどくない限りもう一度走れます。
また、走れてはいるけどフロントサスのオーバーホールを5年以上やっていない方も一度ご相談ください。もう少し良くなるかもしれません。

今回はAPBですがAMのご依頼もよく頂きます。
もちろん古くても割と補修部品が入手可能ですのでお気軽にご相談くださいませ。